私が生まれた時、母方の祖母が私の手相を見て「この子は賢い子になるよ」と言ってくれたそうだ。
私を褒めることなんてないし、誰それが褒めていた、なんて話もしない母だったが、自分の母親(祖母)が言ってたことだけは話していた。
母方の祖母は私に対して何かといい評価をしてくれた人だった。
でもその度に「母が嫌な顔をしていた」という記憶がある。
「おばあちゃんがこんなことを言ってた」と、実に憎々しげな表情で言うんだ。
だから私はいつも、褒められているのに嫌な感じになるという矛盾を感じていた。
今はそれは、あの人は表情と言動が一致してなくて、何故だか攻撃的な物言いをする人だったからかもしれないと思う。
でも子どもの頃はそんな風には思わなかった。
母の表情から、「おばあちゃんの褒める通りにしてはダメなんだ」感じ取っていた。
子どもは親の表情からいろいろな情報を受け取ろうとする。
乳児が食べ物を口に入れようとした時、親が「嫌な顔」をすると子供はそれを食べないと言う。「あ、これって食べちゃ危険なんだ」と敏感に察知するんだろう。
だから親の表情にズレがあると、子どもはとても混乱する。
それが良いことなのか悪い事なのか分からなくなるのだ。
母は表情や言い方に「ズレ」のある人だった。
例えば「それ、食べていいよ」という時は『許可』を表すんだから、どちらかと言うと穏やかな表情・言い方の方が良いよね。
でも母は「攻撃的な表情と言い方」をする時が度々あった。
だから「本当は食べてほしくないけど、食べたいのなら勝手に食べれば!」と言ってるように聞こえるんだ。
人は「言葉そのもの」よりも、表情と言い方からその言葉の真意を図ろうとするよね。だからそこが合ってないと、要らぬ誤解が生まれてしまうんだ。
「勝手に食べれば!」と言われたら、その返答は「別に欲しくないし!」みたいなトゲトゲしいものになってしまうよね。無視しても「なんであんな言い方すんだろう?」と嫌な感情が残ったりもする。
母の物の言い方と表情のズレ。
何が原因でそうなっていたのか分からないが、脳の誤作動としか思えない奇妙さだった。
あの人は一体、何がどうでああだったんだろう?
それをはっきりさせてから旅立ってほしかった…