株式会社ホーユーという給食・食堂運営会社が倒産したってことで、全国の学校や官公庁がてんやわんやだそうだ。
値上げが通らずに倒産…という話を聞いて、前に行ったことがある、病院の厨房バイトのことを思い出した。
病院の厨房バイト
そこは病院専門の給食運営会社だった。
時給はあまりよくなかったが、勤務時間が5時間程度という事と、まとまった休みが取れること、シフトの融通が利くのが気に入って働くことにした。
厨房自体は朝の５時から夜の９時まで年中無休で動いているが、私は午後しか入らない契約だった。
病院の食事と言っても調理することはなく、レトルト状態で届く調理済みの食材を、粉砕したり、どろどろに加工したりして、指定通りの状態にして運ぶだけだ。
肉体労働ではあるが、仕事は簡単だし、シフトは楽だし、ワンオペなので勤務中も気楽だ。
私にとっては良いことずくめで楽しくバイトに通っていたのだが、そのうち段々内情がわかってきた。
現場はギリギリの人数
入ってみてわかったのだが、そこで働くバイトのおばちゃん（私もおばちゃんだが）は私を入れて３人しかいなかった。
何事も無ければ３人で回せるが、仮に誰か一人でも休んだり辞めたりすると、残りの２人の勤務体制が突如として過酷なものとなるのだ。
朝の５時から夜の９時までの勤務が週に何度も入ることになり（まとまった休憩時間なし）、休みも連続では取れなくなる。
そしてもっと恐ろしいのは、２人態勢での「病欠」である。
以前、バイトのおばちゃんAは＜相方のおばちゃんBがケガで３週間休む＞という不運に見舞われたそうだ。
その間、おばちゃんAは休むことなく、朝から晩までの勤務を続けたそうなんだ。
会社は何の対応もしなかったと、おばちゃんAは怒り心頭だった。
「社員が代わりに入らないのかい！」と思ったが、現場の仕事を知らないので、入っても役に立たないらしい。
これはもう、どうしようもない。
夜中３時の連絡
そして恐ろしいのは勤務体制だけはない。
「相方のバイトさんが休むよ」という連絡が、なんと朝の３時に来ると言う。
当然のことながら、その日は突然「朝５時から勤務」となる。
なにせ２人しかいないんだから仕方ないのである。
おばちゃんたちは「連絡が気になって３時になったら勝手に目が覚める」と言っていた。「だから毎日４時間くらいしか寝れないなぁ～」なんて言う。
何だとーーー！
逆に考えると、この状況では、おいそれと休むことさえできない。
ちょっとした熱くらいなら、申し訳なさ過ぎて出てしまうと思う…
先に辞めたもん勝ち
「こりゃあ、先に辞めたもん勝だな」と思った。
ここで誰かに先を越された日には、辞めるに辞められなくなりそうだ。
少なくとも次のバイトが決まるまでは保留にされるだろう。
どうりでみなさん、優しかったわけだ。
「一日（朝から晩まで勤務）は入らなくていいよ～」と言ってくれたのは、辞められたくなかったからだな。
朝３時の連絡も聞いてなかったぞ。
休みも自由に取れますよ～なんて面接した社員さんは言っていたが、実質無理ではないか。
社員の言ってたことと、実際の現場の状況が違い過ぎる。
きっとその内、この過酷体制に巻き込まれるに違いない。
「私、午後しか入らない契約です」を押し通すのは、心情的に無理だよ。
人生最速でバイトを辞める
という訳で、
次のバイト先が確保できた段階で、そのバイトは速攻で辞めることにした。
たった１か月で辞めるという迷惑をかけたが、背に腹は代えられない。
おばちゃんAには「やっと人間らしい生活ができると思ったのに、残念過ぎる～」と泣きつかれたが、これも仕方がない。
辞めてからも何度か「復帰しない？」のラインがきた。
おばちゃんに恨みはないが、ブラック勤務に巻き込まれるのは遠慮したい。
その地方の最低賃金で長時間働くバイトのおばちゃん。
そこで働かなければならない理由がありそうだったが、詳しくは訊かなかった。
そう言えば「今更よそに行くのが怖い」と言ってた。やっていけるかどうかわからんから、と。
でもさ、よそに行った方が良いと思うよ。
条件が悪すぎるよ。
請負業者は辛い
これは想像だけど、給食運営会社はどこも似たようなものじゃないかな～なんて思う。
もっと言えば、飲食業界全体がブラック気味なんじゃ？
給料安い、勤務体制が過酷。
食堂の値段上げるとよそに移られるし、運営会社は弱い立場なんよね。
そこの社員もバイトのおばちゃん達も、病院の職員にはヘコへコしてたもん。
なんかあると、すぐに本社に連絡（苦情）が行くんだとかで。
契約取るために、あるいは入札で、安い金額で請け負ってるんだろうなと思う。
そのしわ寄せが現場のバイトに行くと。
まぁ社員さんも朝の３時には起床するらしいから（バイトの休み連絡があるからね）、大変だなぁと思うよ。
官公庁もさ、入札で安いところに決めるのは良いけど、適正価格も守ってあげてほしいななんて思うよ。
世の中、安くていい物なんて、そうそうないからね。
どこかで誰かが泣いてるかもしれんよっ、て話でした。
