毒母はいつも怒っている。
私が5,6歳の頃が最もひどかったように思う。
その記憶は、幼稚園児だった頃の嫌な思い出として鮮明に残ってる。
特に覚えているのは次の3点だ。
「ソフトクリーム事件」
「ハーモニカ事件」
「雑巾事件」の3点だ。
今回は先の2点について披露しようと思う。
ソフトクリーム事件
私はその日、喫茶店にいた。
そして何故だか1人だった。
何がどうして一人だったのかは覚えていないけど、たぶん母親が先に帰ったのではないかと思う。
ひとりでいるとお店の人が、「もう閉店時間だから、余ったソフトクリームを食べていいよ」と言ってくれた。
カップいっぱいに入ったソフトクリームを食べると、お腹がいっぱいになった。
「まだ食べる?」と聞かれたが、とても無理だったので「もういい」と言って帰った。
ソフトクリームがおいしくてうれしかったので、そのことを家に帰って母に話すと、
「なんで家族の分ももらってこんかったんや! 頼りない子や!」と怒られた。
「食べてもいいよ」と言われたら、「家族の分もちょうだい!」と言わないといけないんだろうか?
母の怒りで楽しかった気分はどこかに吹っ飛び、自分がものすごく悪いことをしたような気分になった。
そしてもう二度とタダでなにかをもらうのは止めようと思った。それは「家族の分もちょうだい」なんて言いたくなかったからだ。
我が子が幼稚園児だったころ、友達が遊びに来ておやつを出すと、「妹と弟の分もちょうだい?」と必ず家族分を要求する子がいた。
黙って渡していたが、私はその子をどうしても好きになれなかった。
「兄弟思いの良い子」ともいえるが、あまりに母に似ていたので好きになれなかったんだ。
ハーモニカ事件
当時通っていた幼稚園へ、私は毎日バスで通園していた。
同じバスで通った同級生の女の子が2人いて、どちらも母の友達の娘だった。
ある日、バス停で母と娘の3ペアで待っていると、一人の女の子が「私、新しいハーモニカ買ってもらったんだ」と嬉しそうにそのハーモニカを見せた。
私は「へぇ~」と特に何も思わずに、ピカピカの新しいハーモニカを見せてもらった。
それだけの出来事だった。
ところが幼稚園から帰って家に入ると、
「なんで”私もハーモニカ買ってもらった”って言わないんだ!!」と怒鳴られた。
幼稚園入園のお祝いとしてだったと思うが、父方の祖父からハーモニカをもらったんだ。
でもそれは子供用の可愛いものではなく、大人用の、ちょっと凝った造りのものだったので、私はあまり気に入らなかった。
でもせっかくおじいちゃんが買ってくれたので、不平不満を言わずに使っていた。
もらってから時間がたっていたので「買ってもらった」という感覚がなかったのと、あまり気に入らなかった事とで、私はなんとも言わなかったんだと思う。
というか私は子どもの頃から、そういう自慢のようなことをわざわざ言うのが嫌だったのだ。気恥ずかしいというか…なんだか言えなかったんだな。
母はそんな私の性格には、まったく気が付いてなかったんだろう。
「自慢されて悔しくないのか! せっかくあの子より良いハーモニカを持っているのに、何の役にもたたんな!」と、怒りが収まる様子もなし。
自慢されたって…? 子供がハーモニカを買ってもらった、その嬉しい気持ちをただ言ってるだけなんではないの?
自慢されたと思うのは、あなたがそんな人間だからだよ。
ママ友に負けたような気になって、悔しかっただけだろう?
自分の卑しい考えに、子どもを巻き込まないでほしいよ。
なぜ怒る?
私が幼い頃、何かうれしいことや楽しいことがあってそのことを母に話すと、母はなぜだか難癖をつけた。
なんでそんなことを言うんだ!?
なんでそんなことをするんだ!?
どうしてこうしなかったんだ!?
そういって怒鳴るんだ。
誰かに何かしてもらった時は、「そんなん、みんなしてもらってるよ! あんただけじゃない!」と言われることもあった。
なぜわが子に、そんな意地の悪いことが言えるのか、本当に疑問なんだ。
何がそんなに気に入らないのか?
自分が思い描いた通りに子供が行動しないと、気が済まないんだろうか。
後年になって「なぜあんなことを言ったのか?」と聞いたことがある。
母は当然のことながら、きれいさっぱり忘れていたが、「なんでやろう?と思ったから訊いただけなんと違うか?」だって。
私は長い長い溜息をつきたい気分になった。
烈火のごとく怒っていたのに、「疑問に思ったから聞いた」はないだろう?
私は肝に銘じたよ。
この人のいう事を真剣に聞く必要はないんだな、右から左へ速攻で忘れても問題ないんだ、と。
そもそも自分の言ったことをすぐさま忘れてしまう人なんだから、こちらが無視しても忘れても、何の問題もないんだよ。
早くそう気づけばよかった。