ずっと不思議に思うことがある。
父はなぜ母と離婚しなかったんだろうか?
我が家は夫婦喧嘩が絶えない家だった。
私が幼いころから何度も離婚の話が持ち上がり、私が10歳の時にはいよいよということになった。母が私たち子ども連れて家出をしたのだ。
結構長い期間で、2か月ほど母は親戚の家にいた。
私は小学校があったので一人家に帰され、しばらくは父との生活だった。
父の親は離婚には賛成だったらしい。
しかし父は離婚しなかった。そればかりか離婚しないように母に頼んだのだ。
私は父に離婚してほしかった。
母は明らかにおかしい。父もそれはわかっていたと思う。
いつも「なぜお前は、そんな風に○○なんだ!」と怒っていた。
にもかかわらず、何が結婚生活を継続させる理由になったんだろうか?
父と母、どちらと一緒に暮らしたいかという話になった時、「絶対に父について行こう。あんな母と一緒にいたら私はダメになる」と思った。
たった10歳の子どもがそう思うのだから、母はよほどひどかったのだ。
父の懇願で離婚の話は霧散し、相変わらず派手な喧嘩を繰り返しながら父は70代でこの世を去った。父は本当にあれでよかったんだろうかと時々思う。
父が末期がんであと半年あるかないかという時に、母は父に詰め寄ったそうだ。
「私はよくやったよね! 家のことも家計のことも良くやったと思うやろ?」ときいたと言う。
呆れると言うかなんというか…
立場が逆なんじゃないのかと思う。
何か言うんだったら、「お父さん、よくやってくれてありがとう」じゃないの?
それが言いたくないんだったら、黙ってればいい。
死を前にした人にさえ、自分を認めさせたいという欲が消えない母親。
この人は一体なんなんだろうか…
父は一体こんな人の何が良かったんだろうかと、不思議でならない。