母の一番の特徴は、感情のコントロールが効かないという事だった。
『感情のままに』とは喜怒哀楽を自分の都合で好き勝手に表すだけではなく、その時の気分でものを言ったり行動したりすることも含まれる。
毒母は何につけても衝動的で計画性がなく『気きまぐれな人』だった。
毒母が残した実家も、母の気まぐれのせいでおかしいことになっている。
実家の壁や扉はあっちこっち壊され、外構の塀も一部欠損している。すべて母が「邪魔」とか「光が入ってこない」などの理由で取り壊したものだ。
センスのある人がDIYでリフォームするならわかる。
しかし母の場合はリフォームなんてかっこの良いものではない。
最後までやりきれない上に綺麗にもできないので、それは単なる破壊でしかない。
事実母は「釘も打てない」と言うくらい大工仕事は苦手だった。
だったらするなって話である。
母の希望で造ったものも、2,3年で気が変わり壊してしまう。そんなことを長年続けていると、そりゃ家もおかしくなってくるだろう。
床の間も壁ごと壊され、不格好な状態になっている。
二階の部屋の入口ドアはすべて取り外されている(ドアは捨ててしまってない)。
リビングの木部はニス塗で情緒があったのに、何故だがペンキが塗ってあって不細工だ。
外の塀も端の方が無くなっていて、代わりにレンガが積まれている。
和風の庭にレンガは合わず、これもなんとも不細工だ。
門扉も元あった場所から移動されていてかっこ悪い感じになっている。
庭木も多くが幹の途中から伐採されていて、地面に材木が突き刺さったようになっている。しかも通りから庭が丸見えだ。
母は薄暗いことが何よりも嫌いで、家の中にはいつも日光がサンサンと降り注いでいないと気が済まない人だった。
だからカーテンは付けずペラペラの薄いレースが一枚あるだけで(このレースも何故かすべての窓で柄が違う)、それさえも滅多に閉めないので、床のフローリングは紫外線でささくれている。
母には美的感覚がないんだろう。
その時の気分で「造っては壊し」を繰り返してきたせいで家全体に統一感がなく、ガチャガチャした安物臭い感じになってしまっている。
感情の制御ができない人は、家も破壊してしまうのである。
実に傍迷惑だ。
この不格好な実家を相続し、どこから直したらいいんだろうかと頭を抱えている。
リフォーム代と維持費が…
あれこれ考えるのも面倒なのでさっさと売ってしまいたいが、田舎の築古住宅ゆえすぐには買い手が見つからない。たとえ売れたとしても二束三文である。
母は晩年、「家をやるのに感謝がない」だとか「家を売って、お金を使いきってやろうか」などと脅しともとれる憎まれ口を叩いていたが、実際この家に嫌味や暴言を辛抱するほどの価値はないと思われる。