母は、私に関する「ここだけの話」という本人に言ってはいけない話を、全部私に話す人だった。
ただし、「誰かが褒めている」という話はしない。
悪く言ってた、非難してたという類のこと(要するに悪口)だけを言うのだ。
『○○さん(親戚)があんたの顔を▽▽って言ってたわ』
その時の母の様子は、なんとなく「楽しそう」だった。
「あの人は酷いことを言うけど私は違うで、一緒にあの人の事を『悪い人』って言おうよ」というふうに感じたのだ。
誰かを悪者にして、仲間意識を得たかったのだろうか?
まるで小学生ではないか。
母の衝動性もあって聞いたことを黙っておけない部分もあったと思うが、それなら良いことも言うはずなのだ。
母は明らかに報告する内容を選んでいた。
残念ながら母の思惑(かもしれないこと)に反して、私は裏で私のことをとやかく言う人のことよりも、そんなことをいちいち報告してくる母のことを「アホだ」と思っていた。
自分のことを悪く言っていると聞けば、誰だって傷つくのではないだろうか?
母はなぜそこに気が行かないのか本当に不思議だった。
自分だって人から悪く言われると激怒していたのに、他人も同じ気持ちになるんだと何故わからないんだろう?
たとえ傷ついたとわかっても、私が悪者にされるだけだった。「あんたは何でも気にする!」と責められるだけ。
何をどう解釈すればそうなるんだろう?
頭がおかしいとしか思えない。
平穏な場にトラブルを起こし、イヤな雰囲気にさせ、他人を激怒させる。
時に母はそんな人だった。