何かの障害のせいかもしれないが、母は本当に他人の気持ちが分からない人だった。
人の気持ちも分からない上に空気を読むこともできないので、時にはとんでもない惨事が起きたりする。
火の手が広がらないうちにと思って周りの者が止めようとすると、「バカにされた!」と思うのか、急にわめきだしたりするので始末に悪いのだ。
今回は体験談と伝聞の、母の「人の気持ちが分からない」エピソードを並べてみようと思う。既出なものもあると思うが、ご了承いただきたい。
①プレゼント返品事件
何年も前に母の日のプレゼントとして渡したはずの財布が、「これ、一回も使ってないから、あんた使うか? 捨てるのももったいないしな」と言って、新品箱ごと私の手元に戻ってきた。
母は「遠まわしに」とか「気を遣う」ということがほとんどできない人だった。思ったことをストレートにぶつけ、相手を怒らせたり、傷つけたりすることは得意中の得意だったので、こういう惨事が起こるのだ。
そう言えばこんなこともあった。一緒に食べようと思って焼き菓子を持って行った時、母は開口一番「そんなん、いらんで!」と言ったのだ。「せっかくやけど、最近お菓子は食べんようにしてるんよ、悪いなぁ…」くらい言えんのか?と思うが、そんなセリフを期待するだけ無駄なのである。
②子供の性問題に立ち入ってしまう毒親
思春期の頃、ちょっとエロなラノベ小説を読んでいたことがあった。ある日学校から帰ると、隠していたはずの件のラノベ本が、机の上にドン!と置いてあったのだ。そして背後に母がいて「あんた、そんな本ばっかり読んでたらアホになるで」と言ったのである。
隠してあった場所を「私が見つけた!」と言わんばかりに誇らしげに知らせ、本を読んだらしく、「恥ずかしかったわ」と言われるというおまけ付けであった。
またこのことで、母は私がいない間に部屋を家宅捜索している事がばれたのだが、母に悪気はないので「ばれた」は私の感覚でしかなかった。
子どもの「性」の問題はデリケートなもの。親は子どもがしている事に危険性がない限り、そっとしておくのが普通ではないだろうか?
子供が恥ずかしい思いをする事を、なぜわざわざするのか疑問であるが、子どもの性の問題に立ち入ってしまうのは毒親あるあるではないだろうか?
③家族の性問題暴露事件
性問題が続くが、私が母の発言の中で最も「爆弾発言だ」と思うのがこれである。母はこともあろうに、父親の「性問題」を子供の前で暴露したのである。
詳しく書くのは憚られるが、父は糖尿病を患っていて…と書くと何となく想像して頂けるのではないだろうか? 母は、父がそのせいで私(毒母)に当たるのだと子ども達に訴えたのだ。既婚の子ども達を平日の夜に呼び出して、だ(暴力沙汰とかではなく、夫婦喧嘩が発端だった)。
当然のことながら、私を始め誰一人母の味方をする者はなく、言葉も無く、無言で実家を後にした。あれほど情けなかったことはない。心底「なんて愚かな人なんだろう」と思った。
こんなことを子供たちの前で暴露された父の気持ちを考えると、なんとも言い難い気持ちになった。自分を守るためには手段を選ばない母を、心底恐ろしいと思った事件だった。
②親戚の”聞きたくないだろう昔話”を嬉々として始めてしまう母
母の弟はバツイチの再婚だった。何十年も前の事だが、前妻さんとの離婚話で1年ほど揉めていて、その間、まだ幼かった子ども達を親戚で預かることになった。我が実家でも1か月ほど預かった。
随分と昔の話なので、親戚同士ならばタダの思い出話になるかもしれない。しかし、その昔の話を、母は後妻さんや姪たちのいる場で嬉しそうに話し始めたらしいのだ(叔母伝)。
叔父や姪たちが困っているのにも気が付かず、業を煮やした母の妹が「明日も早いし、そろそろお開きにしようか」と話を止めようとすると、いきなりわめきだしたと言う。「あんたにそんなこと言われる筋合いはないわ!!!!」となったらしい。
そもそも姪たちにとっても、実の母親が出て行った話なんて今更聞きたくないだろうし、後妻の叔母にとっても同じだろう。なんと返答していいのか分からないと思う。母はそういう事が本当に分からない人だった。
こうやって書いていると、前回のXの引用文が身に染みる。
『一般常識的に考えておかしなことを言う人は何か困難を抱えている』
そうだよなぁ…とつくづくと思う。